フェイク・コメント
頭が痛い・・・。
頭痛が始まってから、3日が経過した。
痛みに耐えながら会社で仕事をしているが、家に帰ると動けなくなってしまう。
妻からは「早く病院いきなさいよ」と言われるが、仕事の都合でなかなか行くことが出来ない。
「仕事と身体、どっちが大事なの?」
本気で心配する妻の問いに、答えることが出来なかった。
~ 翌日 ~
仕事の合間に、頭痛外来のある専門病院に電話をした。
「もしもし、急なんですけど今日診察の予約って取れますか?」
「今日の17時でしたら、お取り出来ますよ」
17時まであと2時間。
「仕事と身体、どっちが大事なの?」
妻の言葉が頭から離れない。
「17時で予約お願いします」
席に戻りすぐに上司の席に向かった。
「すいません、早退させてください」
上司の許可をとり、すぐに職場を出た。
モノレールに乗り、グーグルマップで予約した病院を検索する。
降りる駅と駅から病院までのルートを確認すると、目的の病院に表示される評価という項目が眼に入った。
評価につけられているコメントを見ると「上から目線で最低の対応」「ため口で嫌な気持ちになる」といった書き込みがなされていた。
そんなに評判の悪い病院なのか?
違う病院に変更するか?そんな考えが頭をよぎったが、すでに予約時間が迫ってきている。
今から他の病院を予約できるはずもない。
諦めて予約した病院へと向かった。
* * *
病院の中に入ると、平日にも関わらず多くの人が待合室に座っていた。
人気のある病院のようだ。
「17時に予約した高宮です」
受付に名前を告げ、渡された問診票に症状を書き込んだ。
「待合室で少々お待ちください」
待合室で待っているとすぐに看護師さんが現れ、診察前の問診が始まった。
問診票をもとに、隣に座り敬語で丁寧に症状を聞いてくれる。
「もう少ししたら、診察室に呼ばれますのでお待ちください」
今のところ受付やスタッフに不快な点はない。
次に登場する医者がくせ者なのだろうか?
「高宮さん、診察室にお入りください」
お知らせのアナウンスに呼ばれ、診察室に急いだ。
診察室の扉を前にして、まるで面接を受ける時のような緊張感が走る。
扉を2回ノックし「失礼します」の掛け声と共に扉を開いた。
中に入ると、年齢は50歳位、白髪混じりで短髪の男性医師が座っていた。
顔に笑顔は無いが、特に怖そうな感じはしない。
「こちらへどうぞ」
目の前に用意された椅子に座るように促された。
椅子は医者と向かい合わせではなく、隣合うような配置に置かれ、やけに医師との距離が近い。
「今日はどうされました?」
詳しく症状を説明すると、すぐに精密検査を受けることになった。
ほぼ飛び込みのような状況で、精密検査まで受けられるのは嬉しい誤算だった。
MRIで頭部断面図の撮影をして、再度診察室に入った。
「高宮さん、異常なしですね。脳は綺麗ですよ」
とりあえず、脳に異常がないことに安心した。
「頭痛は今はおさまっているようですが、お薬出しておきましょうか?」
「せっかくなのでお願いします」
「お薬は飲まない方もいますが、痛いのに我慢するのは辛いですからね。痛みが始まったと思ったらすぐに飲んでください」
その後、脳の異常以外に考えられる、頭痛の要因などを教えてもらい、診察室を後にした。
会計を済ませて病院を出るときにふと、ここは良い病院なのでは?と感じた。
ネットのコメントが現実と違いすぎる。
ネットにかかれているコメントはなんだったのだろうか?
コメントが書かれた1年前はそういう状況だったのだろうか?
あるいは商売敵からの嫌がらせなのだろうか?
ネットに書かれたことが、永久に残る時代。
悪意や間違いで、簡単に人を陥れたり潰すことが出来る世界。
インターネットの恐ろしさを改めて感じた。