悪い注文正しい注文

家族3人で始めてコメダ珈琲店を訪れた。

ベビーカーごと入れる余裕のある店内。
トイレにはオムツ交換台も用意され、赤ちゃん連れには大変ありがたい。

席にはメニュー表が2冊用意されていたので、私と妻それぞれで注文する品を考えることにした。

メニュー表を見ながら検討していると、息子が急に泣き出した。
急いでミルクをつくって飲ませると「ゴクゴク」と喉を通る音が、とても美味しそうに聞こえる。

「俺もミルクが飲みたい」

ふと芽生えた感情に従い、メニューにミルクが無いか探していると、珈琲の写真が占める中にミルクがたっぷり注がれたカップの写真を見つけた。

「これにしよう」

妻も注文を決めたので、呼び出しボタンを押すと、若い女の子が注文を取りに来てくれた。

「私はコーヒーとシロノワール

妻はコメダ珈琲店の定番人気メニューを頼んだ。
初めて来たお店でメニュー表に当店一番人気と書かれると、つい頼んでしまうのが人の心理なのだろう。

次は私が注文をする番だ。

「ラージミルク!」

私の注文を聞いて、店員の子は「ん??」という戸惑った顔を見せた。
珈琲店で珈琲を頼まずミルクだけを頼むのは非常識だっただろうか。
珈琲を頼む際のオプションとして、ミルクが用意されているのだろうか。

「すいません。メニュー表のどちらになりますか?」

店員はラージミルクというメニューがわからないようだ。
そうか、この子はまだ入ったばかりで、メニューをまだ覚えていないのだろう。
メニュー表の該当ページを開いて、ラージミルクの写真を見せた。

すると妻が「あれ?私のメニュー表と何か違うね」と、もう1つのメニュー表を差し出してきた。

妻から渡されたメニュー表を見ると、確かに何かが違う。
私のメニュー表には「Large milk」と書かれているが妻のメニュー表には「たっぷりミルク」と書かれている。

「これ、外国人向けじゃないの」

よくよく見ると私の持つメニュー表は表面に大きな字で「English」と書かれていた。
疲れていたのか、何の違和感も感じずに英語のメニュー表を受け入れてしまっていたようだ。

しかし、外国人向けのメニュー表だが、注文したメニューに間違いはない。
外国人にしか注文出来ない限定メニューではないだろう。
では、なぜ注文が通じなかったのか考えると、発音が悪かったからに違いない。

「ルゥアァズィムィルクッ!」

エルの発音は難しい。